世に「落ちものパズル」は数あれど、「自分が落ちるパズル」というのは後にも先にもこのシリーズだけだろう。



 それが、『ミスタードリラー』。
 アクションゲームに分類されることもあるが、より正確に言うならパズルアクションである。
 1999年にアーケードで登場し、当時人気が下火だったパズル系ジャンルとしては異例のヒットを記録。前年にアメリカでヒットしたアニメ『パワーパフガールズ』に近い雰囲気を持つポップなキャラクターデザインも好評を博し、当時のゲーセンの女性客増加にもひと役買ったと記憶している。
 そして、翌2000年には満を持してPS、DC、GBCの3機種に移植された。ファミ通のクロスレビューでは3機種版ともそろって殿堂入りという、鳴り物入りのデビューだった。

 ぼくはPS版から入っておおいにハマり、のちにGBC版も購入。それらで鍛えた腕前を試すべく、逆輸入的にゲームセンターにも通うようになった。
 間違いなく、ぼくの思春期を彩った代表的ゲームのひとつだ。


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出典:http://www.jp.playstation.com/software/title/jp0700npjj00001_000000000000000001.html

 ミスタードリラーの魅力は、端的に集約して3つあった。
 「わかりやすさ」「目標の立てやすさ」「難しさ」である。

 まず、わかりやすい。
 このあたりは、さすがアーケード発のゲームである。ミスタードリラーは、1プレイ(100円)でゲームの目的、ルール、操作、基本的な攻略方法、すべてが理解できるようにできていた。
 なるほど、エア(酸素)が尽きないようにしながら下へ掘り進めばいいんだな。使うボタンは十字キーとボタンひとつだけか。壊すとエアが減る×ブロックは掘らないようにして、逆にエアが増えるカプセルを取っていくとよさそうだぞ。
 ちなみに、このあたりの「1プレイでゲームのキモがわかる」設計は、2年後に同じくナムコから出るパズルゲーム『ことばのパズル もじぴったん』にも活かされることとなる。

 次に、目標が立てやすい。
 1マス下に掘れば1メートルで、ゴールは1000メートル。今回は何メートルまでいけたか、というのが当然毎回出るから、次はそれを上回ろうとか、800メートルを超えてみようとか、プレイヤーひとりひとりで自分に合ったゴールを明確に設定できた。
 1000メートルをクリアしたらしたで、スコアアタック、タイムアタックの楽しみもあった。家庭用の一部機種版では、1000メートルを超えて掘り続けられる『とことんドリラー』モードも追加された。

 そして、難しい。
 こんなにわかりやすいのに、こんなに目標が立てやすいのに、難しいのだ。
 頭の中では、それはそれはもう、華麗にスイスイと掘り進むホリ・ススム(主人公)の姿がイメージできているのに、実際には×ブロックに囲まれてしまってエアを減らさざるを得なかったり、逆にエアを無意味に2連続で取ってしまったり、くっついて止まると思いこんでいた頭上のブロックがそのまま落ちてきてつぶされたり……
 ああ、くやしい!できるはずなのに!もうちょっとでいけたはずなのに!


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出典:http://www.jp.playstation.com/software/title/jp0700npjj00001_000000000000000001.html

 クリアできそうでできない、というもどかしさに、当時、ぼくを含むたくさんのゲーマーがとりこになった。
 ゲーム性のわかりやすさゆえに、自分がどこでミスしたか、さっきのプレイのなにがいけなかったか、というのはすぐに気づけるので、すぐに修正したくなり、何度も何度もリトライしてしまう中毒性があった。


Mr. Driller
Mr. Driller
¥600
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 ぼくはいまでも、当時のことを思い出しては「いまやったらどれくらいいけるんだろう」と気になってしまい、そこそこの頻度でiPhone版を起動してしまう。そして、気がついたら30分~1時間くらいやり続けてしまう。
 さすがにスマホのタッチパネルでは操作性がイマイチでミスタードリラー本来の気持ちよさは味わいきれないので、初めてミスタードリラーをプレイする人は必ずゲーム機でプレイしてほしいが、当時ハマった人が雰囲気を思い出すには、iPhone版はちょうどいいかもしれない。
 

 また、思い返せば、ミスタードリラーは時代にも恵まれたゲームだったと思う。
 アーケードゲーム市場や家庭用ゲーム市場が縮小したいまでは、ミスタードリラーのようなシンプルなパズルアクションをアーケードやフルプライスで出すことはまず不可能だ。アーケードで出すなら萌え要素なりコレクション要素なりを付加して確実にリピーターを作らなければならないし、家庭用ゲーム機で出すとしたらダウンロード専用で1,500円あたりが限界だろう。
 「ひたすら掘って自分が落ちていくパズル」という、ワンアイデアでの勝負。それが許される時代にそこに挑み、見事にゲームファンの心をつかんだ快作。それがミスタードリラーだ。

 残念ながら、完成度が高すぎたがゆえに発展性が弱く、長続きするシリーズにはならなかったが、いまでも『ミスタードリラー』と聞けば「ああー、ハマッたなぁ」と懐かしむ人は多いのではないだろうか。



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出典:http://plaza.rakuten.co.jp/camui34/diary/201110180000/

 現在でも一部のゲームセンターでは、17年前と同じ筐体でミスタードリラーを楽しむことができる。
 ぼくはいまだに、レトロなゲーセンのビデオゲームコーナーに行くと必ず、ピンクのポップな字体で書かれた「Mr.DRILLER」の文字を探す。