151112_2

 新しい技術や機器が普及すると、それをギミックとしてうまく取り入れたゲームが登場する、というのは昔からある流れだ。

 バーコードを読み取ってキャラクターを作る『バーコードバトラー』。
 CDを読み込んでモンスターを召喚する『モンスターファーム』。
 最新のものでは、Googleマップを使った拡張現実で陣取り合戦を行う『Ingress(イングレス)』。

 さて、iPodやiPhoneが日本で普及し始めた2008年ごろ。
 その音楽再生機能を活用した画期的なゲームアプリが登場したことをご存じだろうか。
 

151112

 『ソングサマナー 歌われぬ戦士の旋律』(スクウェア・エニックス)である。
 2008年にiPod用ゲームとしてリリースされ、2009年にiPhone/iPod touchに対応した完全版がリリースされた。

 そのゲーム内容を端的に説明するならば、「端末内の楽曲から戦士を召喚して戦うシミュレーションRPG」である。

 このゲームのキモは、言わずもがな「楽曲から戦士を召喚」というギミックそのものだ。
 ゲームとは関係ないはずの身近なものがゲームになる。ふだん聴いている音楽がかっこいいキャラクターに変わる。そのおもしろさこそがある意味すべてであり、それを楽しめるかどうかがそのままゲームの感想に直結する。

 ソングサマナーは、そのポイントをよく理解して作られたゲームだった。
 違う曲を再生すれば違うミュージックファイター(戦士)が登場するのはあたりまえだが、たとえ同じ名前の戦士が出た場合でも、そのレアリティや能力値は細かく異なる。「曲の数だけ戦士がいる」と言ってもよく、再生する楽しみがいつまでも減らないようになっていた。

 また、召喚に使用した曲をふだんiPhone/iPodで聴いていると、次に『ソングサマナー』を起動したときにその戦士を強化できる、「リスニングポイント」というシステムもあった。
 これは、携帯音楽プレーヤーの特性をうまく活かした大発明だったと思う。お気に入りの曲から生まれた戦士が運悪く弱くても、日々、その曲を繰り返し聴くことである程度強くできるのである。


 このように、『ソングサマナー』はiPhone/iPodの特性をよく研究して開発されたゲームだったが、いっぽうで、欠点も明確にあった。

 おそらく、ギミックを試す実験作、という位置づけや、それゆえの制作予算の制限もあったのだろう。
 シミュレーションRPGとして肝心の戦闘システムやゲームバランスは、お世辞にも優れているとは言えなかったのだ。よく言っても「まあ悪くはない」程度。ミュージックファイター召喚のギミックを高く評価するファンですら、戦闘については「作りが粗い」「子どもだまし」などと厳しく言う声が多かった。
 ぼく自身も完全クリアまでプレイしたが、一部のアーチャーが使える「ショットインザダーク」という射程距離が無限の異常に強いスキルを適当に連発させるだけで簡単にクリアできた印象しかない。

 せっかく曲ごとにレアリティや能力値が細かく違う戦士を生み出せて、日ごろ音楽を聴くことで強化もできる優れたギミックがあっても、戦闘にその違いを活かせるほどのクオリティがない。
 これこそが『ソングサマナー』のもっとも残念だった部分であり、同作品がせいぜい佳作止まりとしてしか評価されない原因であると考えられる。


 「ゲームと関係ないはずのものがゲームになる」というギミック自体は、いつの時代も一定数のゲーマーの好奇心をくすぐる魅力がある。
 iPhoneの普及率も2009年より格段に高まったいま、当時のギミックを活かしながら、戦闘システムとゲームバランスを練り直した新作がもし出たならば、なかなかの売り上げが期待できそうな気がするのだが……

 「けっこう好きだった」と懐かしむ隠れファンが意外と多いゲームだけに、その声をいつかスクウェア・エニックスが拾ってくれればいいのだけど、と思う。



SONG SUMMONER: The Unsung Heroes - SQUARE ENIX(公式サイト)
http://www.square-enix.co.jp/songsummoner/jp/

ソングサマナー 歌われぬ戦士の旋律:完全版(iTunes)
https://itunes.apple.com/jp/app/songusamana-gewarenu-zhan/