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 人は「ボタン」が好きである。
 それはある種の本能であるとも言ってよく、まだ1歳の我が家の子どももボタンが大好きだ。リモコンのボタンや電灯のスイッチを喜んで連打する。

 なぜ人がボタンに惹かれるのかと言えば、それはひとえに「ごほうび」があるからである。
 ボタンを押すと、たとえば、チャンネルが変わる。音楽が鳴る。電源がついたり消えたりする。さらに言えば、押したときの沈み込み、「カチッ」という音、バネの反発の感触なんかも気持ちいいものだ。
 すなわち、ボタンは、ただそれを「押す」という行為の簡便さの割に、もらえる「ごほうび」が大きいのだ。
 苦労の対価。アクションに対するリアクション。その「割のよさ」ゆえに、人はボタンに惹かれる。
 
 さて、この「ごほうび」という考え方をゲームソフト制作に転用し、「ボタンを押す気持ちよさ」を徹底的に追求。ひとつの到達点をゲーム業界に示してみせた作品がある。

 それが、コーエーテクモゲームスの『無双』シリーズだ。

 ボタンを押すと、即座にド派手な攻撃が出る。それによって、バタバタと敵が倒れる。連打したり、違うボタンを押したりすると、素早く攻撃がつながり、どんどん派手になっていく。そしてそれによって、さらにバタバタと敵が倒れていく。タイミングや位置取りを考えて押せば、もっともっと多くの敵を巻き込める。
 ボタンを押すと、必ず「すぐに」「大きな」ごほうびが得られる。しかもそれは、押せば押しただけ、考えれば考えただけ増大していく。
 文字で書くとものすごく単純だが、このシンプルなしくみを、PS2黎明期に美麗なグラフィックで表現してみせた『真・三國無双』(コーエーテクモゲームス/2000/PS2)は、世の中に絶大なインパクトを与えた。

 同シリーズのヒットぶりはすさまじく、特に『真・三國無双2』のときには、それをプレイするためにPS2本体を購入する人も全国で続出。
 その後、フォロワー的な類似ゲームが多く生まれたほか、ある人物が圧倒的な活躍をする様子を指して言う「無双する」というネットスラングも生まれ、一般化した。
 そして、『真・三國無双』の発売から15年が過ぎたいまも、コーエーテクモゲームスの主力コンテンツとして新作が出続けていることは言うまでもない。

 歴史モノで、暴力表現ありのタクティカルアクション。
 決して万人向けではないはずのジャンルから、子どもや女性、ライトゲーマーを多く巻き込んだミリオンヒットが生まれ、アクションゲームの中に「無双系」という新たなジャンルが築かれた。

 その偉業の根底には、ゲームの原点とも言える「ボタンを押す気持ちよさ」、娯楽の原点とも言える「ごほうび」をとことん追い求めた結果の、突き抜けたゲームデザインがあった。
 
 「一騎当千の爽快感」。ゲーム史に燦然と輝く、すばらしいキャッチコピーだと思う。

戦国無双4 Empires
コーエーテクモゲームス
2015-09-17